論文解説『海洋性アンセリンの健康機能』

解説する論文:『海洋性アンセリンの健康機能』

この論文でわかること

どんなことをしたの?

海洋性アンセリンの新たな健康機能と機能性食品素材としての可能性について概説されている

本総説論文では、海洋性アンセリンが健康機能に及ぼす影響について、研究結果を用いて紹介および説明されています。アンセリンの具体的な健康機能については、①抗疲労効果、②自律神経への作用と血糖、血圧への影響、③尿酸値降下機能、などについての説明がされています。また、アンセリン含有製品である「マリンアクティブ®10」の製法と物性、そしてその体内動態と安全性などについての報告も紹介されています。

なにがわかったの?

アンセリン摂取には抗疲労効果、自律神経への影響、血圧、血糖、尿酸値の低減効果がある!

アンセリンを摂取することによって筋疲労の軽減が認められています。また、アンセリンの摂取による血糖、血圧、尿酸値は低減することも明らかにされています。さらに、アンセリン摂取が自律神経の活動に及ぼす影響についても明らかにされています。

論文の具体的な内容

アンセリンによる抗疲労効果

アンセリンの抗疲労効果を明らかにするために、マウスの強制水泳モデルを用いて検討が行われた。その結果、200mg/kgのアンセリンを経口投与されたマウスは、アンセリンを投与されていない対照群と比較して1時間後の流水槽における限界遊泳時間の有意な延長が認められた。また、同時に行われた血液生化学検査では、アンセリン投与群の血糖値および乳酸値の低下、遊離脂肪酸の増加が認められた。さらに、DNAアレイ解析によって乳酸脱水素酵素LDH)の転写亢進が認められた。これらのことから、マウスに経口投与されたアンセリンは速やかに血中に移行し、異化代謝を促進した結果として遊泳時間が延長したと推測されている。

アンセリンの抗疲労効果はヒトを対象にも検討されている。対象は健常成人男性7名で、アンセリン11mg/kgを溶かした200mLの水、もしくは水のみを摂取させ運動負荷試験時の筋電図測定が行われた。筋疲労の評価は、筋疲労の指標となる筋電図の平均中心周波数(Mean Power Frequency,MPF)を用いた計算式によって算出された。その結果、アンセリン摂取時には有意に疲労が少ないという結果となり、アンセリンに筋疲労を軽減させる効果があることが示唆されている。

自律神経への作用と、血糖・血圧への作用

アンセリンが自律神経の活動に及ぼす影響を明らかにするために、Wistarラットの神経フィラメントから直接神経活動を観察した結果、アンセリンの少量投与によって腎枝交感神経の活動は有意に抑制され、投与量を増やすと神経活動の亢進が認められた。一方、胃迷走神経ではそれぞれ逆の傾向を示した。つまり、アンセリンは用量依存的に自律神経に影響を与えること、そしてその支配を受ける臓器にも何らかの効果をもたらすことが期待されている。

血糖値については、2-デオキシグルコース(2DG)を脳内投与し高血糖状態としたラットを用いてアンセリンの効果が検討されている。その結果、アンセリン投与のない対照群は2DG投与により30分後には血糖値が200mg/dL近くまで上昇するのに対し、アンセリン0.1mg、1mg投与群では血糖値の上昇が有意に抑制され、その効果は投与量と逆依存的に現れた。一方、10mg投与群では有意差は無いものの生理食塩水投与群よりも血糖値は増加し、低用量群と逆の傾向を示した。これらの用量依存的な血糖値抑制効果はヒトを対象とした臨床試験でも確認されており、アンセリンは降血糖素材としての応用も可能であると考えられている。

血圧については、Wistarラットにアンセリンを静脈注射した結果、やはり少量投与群では血圧および心拍数が有意に低下したものの、高用量では逆に上昇する結果となった。この際、副交感神経活動はそれぞれ抑制、活性化しているとともに、脳内ヒスタミン受容体の阻害剤投与によってこれらの反応は見られなくなったことから、アンセリン投与により自律神経が理教を受け、副交感神経の活動亢進により心拍数を下げ血管を拡張させた結果として、血圧が抑制されたことが示唆されている。

尿酸値降下機能

アンセリンが尿酸値に及ぼす影響を明らかにするために、高尿酸状態にしたラットにアンセリンを1週間経口投与した結果、アンセリン群では血中尿酸値の低下傾向が認められた。アンセリンはHPRT(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)を活性化することによって尿酸の再利用を促すとともに、LDHの活性化により尿酸の再吸収を抑制することによって尿酸値の上昇を防ぐと推測されている。

以上の結果を踏まえ、血清尿酸値6.5〜8.0mg/dLの成人男性48名を対象とした臨床試験が行われた。2用量のアンセリン含有食品またはプラセボを4週間連続摂取させ、血清尿酸値の変化量についての評価が行われた。その結果、摂取前と比較してプラセボ群では有意な変化は認められなかったのに対して、アンセリン含有食品摂取群では低用量群、高用量群ともに4週間後に低下傾向、高用量群で摂取2週間後に有意な低下が認められた。これらの結果より、軽度の高尿酸血症に対するアンセリンの継続摂取には症状低減効果があることが示唆されている。

アンセリン含有製品「マリンアクティブ®10」の製法及び物性

アンセリン10%含有素材である「マリンアクティブ®10」は、マグロの缶詰や鰹節の製造時に副生する魚の煮汁を原料としている。その製法は、マグロやカツオの煮汁を脱脂した後にイオン交換樹脂でアンセリンを分離する。次いでこの液を脱塩、脱色、噴霧乾燥することで「マリンアクティブ®10」の淡黄色粉末を得ることができる。

「マリンアクティブ®10」の特徴のひとつに、加熱安定性、pH安定性に優れているということが挙げられる。すなわち、「マリンアクティブ®10」は一般的な食品に配合しやすく、商品設計も多岐にわたり行うことが可能な食品素材であると言える。

マリンアクティブ®10の体内動態と安全性

「マリンアクティブ®10」の安全性については、原料となる魚に長い食経験があり、毒性などに関する報告もない。様々な臨床試験においてもアンセリン摂取と関連性があると言った危害事象は発生されておらず、現状では一日耐容摂取量なども設定されていない。

まとめ

本総説論文では、海洋性アンセリンを摂取することによる身体への影響を明らかにしています。論文中では、アンセリンを摂取することによる抗疲労効果、自律神経への影響、血糖および血圧、尿酸値の低減効果が研究データと共に明らかにされています。

高血圧、高血糖といった生活習慣病は、心臓病、脳血管疾患の大きな要因であるとされているため、それらを予防するためにも非常に有用な知見であると言えます。

また、論文中ではアンセリン含有製品である「マリンアクティブ®10」の製造方法や安全性などについても紹介されています。普段の食生活のみからでは十分な量のアンセリンを摂取することは難しい側面があることも事実であるため、このような機能性食品素材は生活改善を容易にする有用な手段であると考えられます。