論文解説『アンセリン含有サケエキスが学生スポーツ選手の疲労低減に及ぼす効果』

解説する論文:『アンセリン含有サケエキスが学生スポーツ選手の疲労低減に及ぼす効果』

この論文でわかること

どんなことをしたの?

アンセリン含有サケエキス(SEAns)摂取が疲労および視覚機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的に、暑熱環境下で屋外スポーツを行う大学生陸上選手を対象としたプラセボ対象二重盲検試験を実施

試料の調製

マルハニチロ株式会社中央研究所にて製造したアセリン含有サケエキス(SEAns)を用いた

被験者

大学陸上競技部において中・長距離種目を専門とする健全な男子大学生9名

試験方法

プラセボ対象二重盲検試験
プラセボ群4名、SEAns群5名とし、被験食としてプラセボまたはSEAnsカプセルを1日9錠7日間摂取させた。

実験デザイン

  • 運動実施日の1週間前に、初期値として①心拍数測定、②疲労感調査、③採血を行った後に被験食摂取を開始した。
  • 暴飲暴食、アミノ酸配合スポーツ飲料およびサプリメント摂取禁止等の条件のもと運動日まで日常生活を過ごした。
  • 運動実施日当日は①心拍数測定、②疲労感調査、③採血を行った。
  • 米飯を200g摂取し、4時間の安静の後、被験食9錠を摂取し、ウォームアップおよび運動負荷(1500m走のタイムトライアル)を行った。
  • タイムトライアルは計3回行い、タイムの変化を疲労の指標とした。
  • 1500m走のスタート5分前およびゴール後1分後に心拍数測定を行った。
  • 運動がすべて終了後に①視力測定、②心拍数測定、③疲労感調査、④採血を行った。

なにがわかったの?

SEAnsの摂取が運動パフォーマンス向上や疲労感の低減などに有効であることが示唆された!

この研究では、大学陸上競技部における中・長距離選手が1週間SEAnsを摂取した場合、①運動パフォーマンスの向上、②筋肉疲労の抑制、③筋繊維損傷の抑制、④筋肉タンパク質の分解抑制、⑤視力の低下抑制、⑥自覚的疲労感の低減、などの効果およびその傾向が認められた。

SEAnsの摂取による効果とそのメカニズム

運動パフォーマンスの向上効果

運動負荷として1500m走を3回行い、タイムの推移を調べた結果、有意差は認められなかったもののSEAns群でタイムが向上する傾向にあり、SEAns摂取による運動パフォーマンス向上の可能性が示唆された。

運動により生体内で生じた活性酸素種はタンパク質や脂質、DNA、白血球などを損傷させ、ミトコンドリアでのATP産生をもたらし身体的な作業効率の低下、すなわち疲労をもたらすことがわかっている。しかし、SEAnsに含まれるアンセリンを摂取することで、アンセリンの有する抗酸化作用により酸化ストレスの上昇を防ぎ、細胞機能の低下を抑制すると考えられている。

筋肉疲労の抑制効果

血液分析において、運動後のSEAns群の白血球数(WBC)がプラセボ群と比較して有意に低値を示した。WBCの増加は筋疲労との相関がある可能性も報告されている。そのため、SEAnsは、運動後の筋肉疲労を低減させる効果があることが示唆された。

運動により血液中のWBCは増加し、それによって筋繊維は損傷するとされているが、SEAnsに含まれるイミダゾールペプチドの摂取はスクワット運動による筋肉痛および筋疲労の低減や筋機能の速やかな回復に貢献し、運動継続時間の現象を抑制する可能性が示唆されている。

筋繊維損傷の抑制効果

プラセボ群では運動後にクレアチンホスホキナーゼ(CPK)が増加しているのに対し、SEAns群では運動後でもほとんど変化がみられなかった。CPKは運動に伴う筋繊維の損傷によって生じ筋肉痛を引き起こすとされている。そのため、SEAnsの摂取は筋繊維の損傷を抑制し、筋肉痛の発生を予防する効果があることが示唆された。

また、プラセボ群と比較しSEAns群では運動実施日の運動前においてもCPK値が有意に低かったことから、1週間の継続的なSEAnsの摂取が通常トレーニングによる筋繊維の損傷を抑制していたことが示唆された。

筋肉タンパク質の分解抑制効果

血糖値の変化をみると、プラセボ群では運動前後でほとんど変化が認められないのに対し、SEAns群では運動後に低下を認めた。運動による骨格筋収縮に伴う筋繊維損傷はタンパク質の分解を引き起こすが、SEAns群では効率的に血糖の利用が促進されることでタンパク質の分解が抑制されることが示唆された。

視力の低下抑制効果

SEAnsの摂取が運動誘発性の視力(静止視力:SVAおよび動体視力:KVA)に及ぼす効果を検討した。その結果、KVAが運動前に比べて運動後に改善傾向にあった。また、KVA/SVA(%)も有意差を認めないもののSEAns群で約16%向上した。

SEAns摂取が網膜等に何らかの作用をもたらしKVAが向上したものと考えられるが、その作用機序の詳細は現時点では不明である。

自覚的疲労感の低減効果

SEAnsの摂取が自覚的疲労感に及ぼす影響を検討した結果、ぼやけ感:目がしょぼつく・目が疲れる・目が痛い・目が乾く・ものがぼやけるといった症状をもつ群では、運動後にSEAns群がプラセボ群より有意に低値を示したことから、眼球や視力に関する疲労感についても改善されたことが示唆された。

さらに、だるさ感:腕がだるい・腰が痛い・手や指が痛い・足がだるい・肩が凝るといった疲労感を有する群の疲労感も、運動後にSEAns群がプラセボ群より有意に低値を示した。これは、SEAnsの摂取によりアンセリンが脳内物質に影響を及ぼし疲労感を低減させた可能性とともに、筋肉損傷の抑制が疲労感低減につながった可能性が考えられた。

まとめ

本論文は、スポーツ選手がアンセリン含有サケエキスを1週間継続して摂取した場合に、運動パフォーマンス(身体的疲労強度)、自覚的疲労感、視力などに及ぼす効果を検証した論文です。

研究結果より、アンセリン含有サケエキスを摂取することにより、①運動パフォーマンスの向上、②筋肉疲労の抑制、③筋繊維損傷の抑制、④筋肉タンパク質の分解抑制、⑤視力の低下抑制、⑥自覚的疲労感の低減、などの効果およびその傾向が認められました。

本論文は二重盲検試験を用いるなど、研究デザインもしっかりと計画されたものであり、その信頼性も高いと言えます。

本論文によって得られた知見は、スポーツ選手のパフォーマンス向上や怪我の予防を考える上で非常に有用なものであると考えます。