論文解説『アンセリン含有サケエキス摂取による心拍変動解析を用いた抗疲労評価の検討』

解説する論文:『アンセリン含有サケエキス摂取による心拍変動解析を用いた抗疲労評価の検討』

この論文でわかること

どんなことをしたの?

【目的】

肉体的疲労だけでなく精神的な抗疲労効果を併せて検証すること

【被験品】

アンセリン含有サケエキス

【対象】

日常的にテニス運動を行う男女14名

【試験の流れと被験者選定】

二重盲検並行群間試験によって行われた。被験食の摂取期間は2週間であった。被験者14名はプラセボ摂取群6名(男性3名、女性3名)、被験食摂取群は8名(男性4名、女性4名)に群分けされた。被験食接種後2週間後にパフォーマンス試験を実施した。

【パフォーマンス試験】

球出し員が30秒間、一定間隔でコートの左右に球出ししたものを、テニスコートの目標に対して打ち返すものであった。その後、20秒間休憩するサイクルを4回行った。これを1セットとし、1セット終了毎に5分間の休憩を挟んで合計3セット実施された。

【評価項目】

アンセリン含有サケエキスの摂取による抗疲労効果について生体センサを用いた心拍変動解析により検証した。

なにがわかったの?

2週間サケエキスを摂取した状態での運動直後の脈波センサの結果では、プラセボ摂取群に比べてサケエキス摂取群の方が、運動直後の脈拍数が統計的に有意に低下し、脈拍数の上昇が抑制される抗疲労傾向がみられた。また、パフォーマンス試験前日の心拍センサを用いた24時間の心拍変動解析より、日中と睡眠時の自律神経機能の変化率は、サケエキス摂取群の方がプラセボ群に比べて睡眠時の副交感神経機能、トータルパワーが高まる傾向がみられた。本実験結果より、アンセリン含有サケエキスの摂取が、運動時や睡眠時にて、肉体的・精神的にも抗疲労効果を示唆する傾向がみられた。

論文の具体的な内容

【脈波センサの結果】

運動前に測定した1回目測定を除き、サケエキス摂取群の方がプラセボ群と比較して運動直後の脈拍数が低い傾向が認められた。全体平均においても、サケエキス摂取群のほうが脈拍数が低下する傾向がみられた。また、最終の5回目測定時では、サケエキス摂取群のほうが有意に低下する傾向がみられた。以上より、アンセリン含有サケエキス摂取群のほうが運動直後の脈拍数の上昇が抑制され、肉体的な抗疲労効果を示唆する傾向となった。一方、その他の自律神経指標に関しては、大きな差異はみられなかった。

【心拍センサの結果】

日中と睡眠時の自律神経機能の変化率を比較した結果、サケエキス摂取群のほうがプラセボ群と比較して睡眠時に副交感神経機能および、交感神経機能と副交感神経の総和であるトータルパワーが高まる傾向が認められた。このトータルパワーは、自律神経の活動量を表す指標とされており、肉体的および精神的疲労と相関しているとされている。

今回の結果では、アンセリン含有サケエキス摂取群のほうが睡眠時の副交感神経が高まり精神的なリラックスや癒し効果がみられ、かつ自律神経のトータルパワーが高まり、精神的な観点からも抗疲労効果を示唆する傾向がみられた。

【結論】

2週間サケエキスを摂取した状態での運動直後の脈波センサの結果では、プラセボ摂取群に比べてサケエキス摂取群のほうが、運動直後の脈拍数が統計的に有意に低下し、脈拍数の上昇が抑制され、抗疲労傾向が認められた。また、パフォーマンス試験前日の心拍センサを用いた24時間の心拍変動解析より、日中と睡眠時の自律神経機能の変化率は、サケエキス摂取群のほうがプラセボ群に比べて睡眠時の副交感神経機能、トータルパワーが高まる傾向がみられた。

本研究結果より、アンセリン含有サケエキスの摂取が、運動時や睡眠時において肉体的・精神的にも抗疲労効果を示唆する傾向がみられた。

まとめ

本研究は、アンセリン含有サケエキスの摂取が肉体的および精神的な抗疲労効果に及ぼす影響を、生体センサを用いた心拍変動解析により検証したものである。その結果、アンセリン含有サケエキスの摂取が運動時や睡眠時において肉体的および精神的にも抗疲労効果を示唆する傾向がみられた。

我が国においては慢性的な疲労に悩む人が就労人口の約60%にも及ぶとされている。疲労やストレスは生活の質(QOL)の低下や心身バランスの乱れを引き起こす大きな要因となる。そのため、アンセリン含有サケエキスの摂取は疲労低減という観点において非常に有用な手段であると考える。

論文解説『長野県産鹿肉の成分及び物性に関する分析調査』

解説する論文:『長野県産鹿肉の成分及び物性に関する分析調査』

この論文でわかること

どんなことをしたの?

本論文では、長野県内で捕獲されたニホンジカについて、血抜きや内蔵等の下処理の違いが肉質に及ぼす影響を検証している。

試料は、長野県内2ヶ所の地域で捕獲されたニホンジカであった。鹿の年齢及び性別は考慮されなかった。試料は、A群:捕獲から0時間以内の血抜き処理(血抜きで残った血液の処理あり)と1時間以内の内蔵処理、B群:捕獲から0時間以内の血抜き処理(血抜きで残った血液の処理あり)と1時間以内の内蔵処理、C群:捕獲から3時間以内の血抜き処理(血抜きで残った血液の処理あり)と3時間以内の内蔵処理の3群に分類された。

各捕獲地および各処理条件の鹿肉について、物性測定、香気成分、遊離アミノ酸組成、イノシン酸カルニチンの分析が行われた。

なにがわかったの?

物性測定および香気成分分析の結果、多少の条件の違いでは肉質への影響が少ないことが示唆された。また、鹿肉の各部位について物性、遊離アミノ酸組成、イノシン酸カルニチン測定をそれぞれ行った結果、機能性ペプチドと言われるイミダペプチドアンセリンカルノシン)、機能性アミノ酸と言われるカルニチンといった鹿肉に特徴的な成分が、いずれの部位においても他の畜肉より多く含まれていることが明らかになった。

論文の具体的な内容

【物性試験】

1.下処理条件の異なる鹿肉の物性(図1)

各処理条件における鹿肉の物性を図1に示す。縦軸は破断強度測定における最大荷重を示している。各処理条件間での結果の差は認められず、むしろ、捕獲された地域による差のほうが大きく示された。しかしこれは、鹿の年齢や性別などの個体差、捕獲された地域の環境や食物による影響であることが考察されている。

論文「長野県産鹿肉の成分及び物性に関する分析調査」より引用した画像

(図1は元論文「長野県産鹿肉の成分及び物性に関する分析調査」より引用)

2.鹿肉の各部位の物性、遊離アミノ酸組成、イノシン酸およびカルニチン含有量(図2)

部位による大きな差は認められなかった。

 

「長野県産鹿肉の成分及び物性に関する分析調査」より引用画像

(図2は元論文「長野県産鹿肉の成分及び物性に関する分析調査」より引用)

【香気成分分析】

1.下処理条件の異なる鹿肉の香気成分(図3)

縦軸は測定された香気成分の検出強度を示しており、この数値が大きいほど香気成分が多いと考えることができる。ジセアチルとアセトインは発酵臭やバター臭、ヘキサナールは青臭さを呈す成分と言われており、鹿肉独特の臭いの主な成分と考えられている。

香気成分についても物性と同様に、各処理条件感での影響はみられず、捕獲地などの違いのほうが顕著であった。

 

「長野県産鹿肉の成分及び物性に関する分析調査」より引用画像

(図3は元論文「長野県産鹿肉の成分及び物性に関する分析調査」より引用)

【成分分析】

1.遊離アミノ酸組成

旨味成分としてよく知られているグルタミン酸アスパラギン酸はそれほど多くなく、むしろ甘味を呈すと言われているグリシンやアラニンのほうが比較的多く含まれていた。また、「イミダペプチド」と呼ばれるジペプチドのアンセリンカルノシンは、他の畜肉と比較しても多く含まれており、特に運動量の多いモモやロースに含まれていることが特徴的であった。

2.イノシン酸

イノシン酸についての特徴的な所見はなかった。

3.カルニチン

牛肉や豚肉と比較し、鹿肉ではどの部位でもカルニチンが多く含まれていた。

【結論】

1.かねてより言われていた血抜きや内蔵処理の条件が肉質に及ぼす影響については、物性および香気成分において、今回の結果からはあまり差はみられず、むしろ生息地や年齢、性別のほうが肉質に及ぼす影響は大きいと考えられた。

2.物性は部位によって大きな差はないものの、利用頻度の低いスネやバラは、他の部位に比べて硬い傾向にあると考えられた。

3.遊離アミノ酸については甘みを呈すとされているグリシンやアラニンのほうが比較的多く含まれていた。イミダペプチドとも呼ばれるアンセリンカルノシンが他の畜肉と比較し多く含まれており、特に運動量の多いモモやロースに含まれている傾向がみられた。

4.旨味成分のひとつであるイノシン酸については特徴的な所見は見当たらなかった。抗疲労効果があるとされているカルニチンについては、部位ごとに多少の差はあるもののまんべんなく含まれており、牛肉や豚肉と比較して多く含まれていた。

まとめ

本論文は、長野県内で捕獲されたニホンジカについて、血抜きや内蔵等の下処理の違いが肉質に及ぼす影響を検証している。また、各部位での成分等の比較もなされている。

これまで、捕獲から下処理までのスピードはお肉の美味しさに直結するものであると考えられてきた。しかし、本研究結果からは、「血抜き」や「内蔵処理」などの下処理を行うまでの速度と美味しさは、物性と香気成分の観点から関係がないことが示唆された。むしろ、それらに影響を与える因子としては、育った環境や性別、年齢などが考えられた。

本研究結果を裏付ける意味でも、今後は性別、年齢、捕獲地などについての条件付けを行った検証が必要であると考える。

論文解説『食肉由来ペプチドの生体調節機能』

解説する論文:『食肉由来ペプチドの生体調節機能』

この論文でわかること

どんなことをしたの?

本論文では、食肉タンパク質の特徴についての概説、および、食肉タンパク質が分解されて生じるペプチドの生体調節機能の解説がされています。食肉タンパク質由来ペプチドの生体調整機能に関しては、カルノシンアンセリンからなる機能性ペプチドについても述べられています。

なにがわかったの?

本論文では、カルノシンアンセリンからなる機能性ペプチドには抗酸化作用、緩衝作用、抗疲労効果があることが示唆されています。また、食肉タンパク質由来ペプチドには血中コレステロール低下作用、中性脂肪上昇抑制作用、血圧上昇抑制作用、抗酸化作用、カルシウム沈殿抑制作用による骨粗鬆症改善効果などがあることが示唆されています。

論文の具体的な内容

【食肉タンパク質の特徴】

畜産食品の中でも、食肉は他の食品素材と比べてタンパク質含有量が多く、タンパク質配給源として重要な働きをしている。食肉などの動物性食品由来タンパク質の摂取が不足すると、病気に対する抵抗力が落ちて感染症にかかりやすく、病気の回復力も低下することが知られている。また、タンパク質の不足は高血圧を促し、血管を弱め、脳卒中を招きやすくなるとされている。

口から摂取されたタンパク質のほとんどは、胃や腸の消化酵素で、小さなペプチドや遊離アミノ酸まで分解されて小腸から吸収される。食肉のタンパク質を構成するアミノ酸では、グルタミン酸が最も多く、続いてアスパラギン酸、リシン、ロイシンとされている。食肉のタンパク質を構成するアミノ酸の組成は生体内のそれに近いため、生体内タンパク質の生合成に効率的に利用される。

さらに、食肉タンパク質の分解物であるアミノ酸には、生体調節機能があることが近年明らかになっている。食肉タンパク質の構成アミノ酸には、骨格筋のタンパク質合成を促進し、分解を抑制する効果があるとされている。この作用は特にロイシンで大きく、筋肉の損傷予防や筋力低下の予防につながる。トリプトファンは精神の安定作用を有するセロトニンの前駆体であり、脳の機能の維持や精神の安定に役立つことがわかっている。食肉タンパク質のうち、ミオグロビンはヘム鉄を含む色素タンパク質であり、筋肉中で酵素を貯蔵する役割を有している。カルニチンは、リシンとメチオニンから合成されるアミノ酸の一種であり、食肉の中では牛モモ肉に多く含まれている。カルニチンはエネルギー生産のため脂肪酸ミトコンドリア内に輸送する役割を有している。

カルノシンおよびアンセリンの生体調節機能】

食肉タンパク質が分解されて生じるペプチドには、生体機能調整機能があることがわかってきている。また、アンセリンカルノシンのように筋肉に豊富に存在する機能性ペプチドもある。

カルノシンは、β-アラニンとヒスチジンが結合したジペプチドである。そして、カルノシンを構成するヒスチジンがメチル化されたジペプチドがアンセリンである。これらは動物の種類やその部位によって含量がことなっている。

カルノシンアンセリンには、抗酸化作用、緩衝作用、抗疲労効果があると報告されている。抗酸化作用には、好中球が作る次亜塩素酸ラジカルによるタンパク質の酸化分解を抑制することが明らかにされている。また、緩衝作用は、運動時に筋肉中で生成する乳酸によるpH低下を抑制し、運動能力の向上に寄与すると考えられている。さらに、近年ではカルノシンが少量では交感神経を抑制し、血糖や血圧を低下する効果があることも報告されている。

【食肉タンパク質由来ペプチドの生体調整機能】

1)血中コレステロール低下作用

豚肉タンパク質由来のペプチドにはコレステロール低下の作用があることが明らかにされている。ペプチドのコレステロール低下作用は、腸管からの胆汁酸の排泄促進によるものであると推察されている。

2)中性脂肪上昇抑制作用

ヘモグロビンから調製されたグロビンペプチドが、食後の中性脂肪上昇抑制作用を有することが明らかにされている。健康人ならびに半健康人が、食事で脂肪を摂取する際にグロビン分解物を同時に摂取すると、食後の血清トリグロセリド値がコントロール群に比べて有意に低下したとされている。また、この分解物を連続摂取することによって体脂肪が低減化される効果も認められている。

3)血圧上昇抑制作用

鶏胸肉の熱水抽出物を微生物プロテアーゼで分解したものを高血圧自然発症ラット(SHR)に投与すると、血圧上昇を有意に抑制することが明らかにされている。さらに、豚モモ肉ミオシンのサーモリシン加水分解物をSHRに経口投与した場合にも、血圧の上昇を有意に抑制することが報告されている。

4)抗酸化作用

近年、筋肉に多く含まれるカルノシンだけでなく、筋肉タンパク質をパパインやアクチナーゼで分解したペプチド画分に抗酸化作用が認められている。この画分に含まれるペプチドは、金属キレート作用とラジカル捕捉作用により抗酸化作用を発現すると推察されている。

5)カルシウム沈殿抑制作用による骨粗鬆症改善効果

ブタ心筋より抽出した粗タンパク質を卵巣摘出した骨粗鬆症モデルラットに30日間投与した結果、カルシウムの吸収率低下が改善されると同時に、大腿骨および頸骨の骨重量が非投与群にくらべ有意に高い値を示した。また、大腿骨、頸骨中の灰分量およびカルシウム量は非投与群にくらべ投与群で高い傾向を示し、骨粗鬆症による骨の無機成分の減少が改善されたと推察された。さらに、骨粗鬆症で低下しやすいと言われている骨幹部の海綿骨の骨密度も投与群で有意に高い値を示した。これらの結果より、心筋タンパク質の投与は骨粗鬆症による骨密度の低下を改善する機能を有することが明らかとなった。

まとめ

近年の生活習慣病の増加に伴い、国民の健康に対する関心は極めて向上している。そんな流れを受けて、多くの畜産食品の生体調整機能が報告されているが、食肉に関する知見は十分なものとは言えなかった。しかし近年、食肉に関する研究も多く行われており、その生体調整機能が明らかになりつつある。

本論文では、そんな食肉タンパク質の特徴ならびにその生体調整機能に関する知見がまとめられている。

過度の食肉の摂取は生活習慣病の原因となってしまうが、適量の食肉タンパク質を摂取することは我々の健康維持に非常に重要な役割を果たしていることが本論文によって改めて示唆されている。

論文解説『海洋性アンセリンの健康機能』

解説する論文:『海洋性アンセリンの健康機能』

この論文でわかること

どんなことをしたの?

海洋性アンセリンの新たな健康機能と機能性食品素材としての可能性について概説されている

本総説論文では、海洋性アンセリンが健康機能に及ぼす影響について、研究結果を用いて紹介および説明されています。アンセリンの具体的な健康機能については、①抗疲労効果、②自律神経への作用と血糖、血圧への影響、③尿酸値降下機能、などについての説明がされています。また、アンセリン含有製品である「マリンアクティブ®10」の製法と物性、そしてその体内動態と安全性などについての報告も紹介されています。

なにがわかったの?

アンセリン摂取には抗疲労効果、自律神経への影響、血圧、血糖、尿酸値の低減効果がある!

アンセリンを摂取することによって筋疲労の軽減が認められています。また、アンセリンの摂取による血糖、血圧、尿酸値は低減することも明らかにされています。さらに、アンセリン摂取が自律神経の活動に及ぼす影響についても明らかにされています。

論文の具体的な内容

アンセリンによる抗疲労効果

アンセリンの抗疲労効果を明らかにするために、マウスの強制水泳モデルを用いて検討が行われた。その結果、200mg/kgのアンセリンを経口投与されたマウスは、アンセリンを投与されていない対照群と比較して1時間後の流水槽における限界遊泳時間の有意な延長が認められた。また、同時に行われた血液生化学検査では、アンセリン投与群の血糖値および乳酸値の低下、遊離脂肪酸の増加が認められた。さらに、DNAアレイ解析によって乳酸脱水素酵素LDH)の転写亢進が認められた。これらのことから、マウスに経口投与されたアンセリンは速やかに血中に移行し、異化代謝を促進した結果として遊泳時間が延長したと推測されている。

アンセリンの抗疲労効果はヒトを対象にも検討されている。対象は健常成人男性7名で、アンセリン11mg/kgを溶かした200mLの水、もしくは水のみを摂取させ運動負荷試験時の筋電図測定が行われた。筋疲労の評価は、筋疲労の指標となる筋電図の平均中心周波数(Mean Power Frequency,MPF)を用いた計算式によって算出された。その結果、アンセリン摂取時には有意に疲労が少ないという結果となり、アンセリンに筋疲労を軽減させる効果があることが示唆されている。

自律神経への作用と、血糖・血圧への作用

アンセリンが自律神経の活動に及ぼす影響を明らかにするために、Wistarラットの神経フィラメントから直接神経活動を観察した結果、アンセリンの少量投与によって腎枝交感神経の活動は有意に抑制され、投与量を増やすと神経活動の亢進が認められた。一方、胃迷走神経ではそれぞれ逆の傾向を示した。つまり、アンセリンは用量依存的に自律神経に影響を与えること、そしてその支配を受ける臓器にも何らかの効果をもたらすことが期待されている。

血糖値については、2-デオキシグルコース(2DG)を脳内投与し高血糖状態としたラットを用いてアンセリンの効果が検討されている。その結果、アンセリン投与のない対照群は2DG投与により30分後には血糖値が200mg/dL近くまで上昇するのに対し、アンセリン0.1mg、1mg投与群では血糖値の上昇が有意に抑制され、その効果は投与量と逆依存的に現れた。一方、10mg投与群では有意差は無いものの生理食塩水投与群よりも血糖値は増加し、低用量群と逆の傾向を示した。これらの用量依存的な血糖値抑制効果はヒトを対象とした臨床試験でも確認されており、アンセリンは降血糖素材としての応用も可能であると考えられている。

血圧については、Wistarラットにアンセリンを静脈注射した結果、やはり少量投与群では血圧および心拍数が有意に低下したものの、高用量では逆に上昇する結果となった。この際、副交感神経活動はそれぞれ抑制、活性化しているとともに、脳内ヒスタミン受容体の阻害剤投与によってこれらの反応は見られなくなったことから、アンセリン投与により自律神経が理教を受け、副交感神経の活動亢進により心拍数を下げ血管を拡張させた結果として、血圧が抑制されたことが示唆されている。

尿酸値降下機能

アンセリンが尿酸値に及ぼす影響を明らかにするために、高尿酸状態にしたラットにアンセリンを1週間経口投与した結果、アンセリン群では血中尿酸値の低下傾向が認められた。アンセリンはHPRT(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)を活性化することによって尿酸の再利用を促すとともに、LDHの活性化により尿酸の再吸収を抑制することによって尿酸値の上昇を防ぐと推測されている。

以上の結果を踏まえ、血清尿酸値6.5〜8.0mg/dLの成人男性48名を対象とした臨床試験が行われた。2用量のアンセリン含有食品またはプラセボを4週間連続摂取させ、血清尿酸値の変化量についての評価が行われた。その結果、摂取前と比較してプラセボ群では有意な変化は認められなかったのに対して、アンセリン含有食品摂取群では低用量群、高用量群ともに4週間後に低下傾向、高用量群で摂取2週間後に有意な低下が認められた。これらの結果より、軽度の高尿酸血症に対するアンセリンの継続摂取には症状低減効果があることが示唆されている。

アンセリン含有製品「マリンアクティブ®10」の製法及び物性

アンセリン10%含有素材である「マリンアクティブ®10」は、マグロの缶詰や鰹節の製造時に副生する魚の煮汁を原料としている。その製法は、マグロやカツオの煮汁を脱脂した後にイオン交換樹脂でアンセリンを分離する。次いでこの液を脱塩、脱色、噴霧乾燥することで「マリンアクティブ®10」の淡黄色粉末を得ることができる。

「マリンアクティブ®10」の特徴のひとつに、加熱安定性、pH安定性に優れているということが挙げられる。すなわち、「マリンアクティブ®10」は一般的な食品に配合しやすく、商品設計も多岐にわたり行うことが可能な食品素材であると言える。

マリンアクティブ®10の体内動態と安全性

「マリンアクティブ®10」の安全性については、原料となる魚に長い食経験があり、毒性などに関する報告もない。様々な臨床試験においてもアンセリン摂取と関連性があると言った危害事象は発生されておらず、現状では一日耐容摂取量なども設定されていない。

まとめ

本総説論文では、海洋性アンセリンを摂取することによる身体への影響を明らかにしています。論文中では、アンセリンを摂取することによる抗疲労効果、自律神経への影響、血糖および血圧、尿酸値の低減効果が研究データと共に明らかにされています。

高血圧、高血糖といった生活習慣病は、心臓病、脳血管疾患の大きな要因であるとされているため、それらを予防するためにも非常に有用な知見であると言えます。

また、論文中ではアンセリン含有製品である「マリンアクティブ®10」の製造方法や安全性などについても紹介されています。普段の食生活のみからでは十分な量のアンセリンを摂取することは難しい側面があることも事実であるため、このような機能性食品素材は生活改善を容易にする有用な手段であると考えられます。

論文解説『アンセリン含有サケエキスが学生スポーツ選手の疲労低減に及ぼす効果』

解説する論文:『アンセリン含有サケエキスが学生スポーツ選手の疲労低減に及ぼす効果』

この論文でわかること

どんなことをしたの?

アンセリン含有サケエキス(SEAns)摂取が疲労および視覚機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的に、暑熱環境下で屋外スポーツを行う大学生陸上選手を対象としたプラセボ対象二重盲検試験を実施

試料の調製

マルハニチロ株式会社中央研究所にて製造したアセリン含有サケエキス(SEAns)を用いた

被験者

大学陸上競技部において中・長距離種目を専門とする健全な男子大学生9名

試験方法

プラセボ対象二重盲検試験
プラセボ群4名、SEAns群5名とし、被験食としてプラセボまたはSEAnsカプセルを1日9錠7日間摂取させた。

実験デザイン

  • 運動実施日の1週間前に、初期値として①心拍数測定、②疲労感調査、③採血を行った後に被験食摂取を開始した。
  • 暴飲暴食、アミノ酸配合スポーツ飲料およびサプリメント摂取禁止等の条件のもと運動日まで日常生活を過ごした。
  • 運動実施日当日は①心拍数測定、②疲労感調査、③採血を行った。
  • 米飯を200g摂取し、4時間の安静の後、被験食9錠を摂取し、ウォームアップおよび運動負荷(1500m走のタイムトライアル)を行った。
  • タイムトライアルは計3回行い、タイムの変化を疲労の指標とした。
  • 1500m走のスタート5分前およびゴール後1分後に心拍数測定を行った。
  • 運動がすべて終了後に①視力測定、②心拍数測定、③疲労感調査、④採血を行った。

なにがわかったの?

SEAnsの摂取が運動パフォーマンス向上や疲労感の低減などに有効であることが示唆された!

この研究では、大学陸上競技部における中・長距離選手が1週間SEAnsを摂取した場合、①運動パフォーマンスの向上、②筋肉疲労の抑制、③筋繊維損傷の抑制、④筋肉タンパク質の分解抑制、⑤視力の低下抑制、⑥自覚的疲労感の低減、などの効果およびその傾向が認められた。

SEAnsの摂取による効果とそのメカニズム

運動パフォーマンスの向上効果

運動負荷として1500m走を3回行い、タイムの推移を調べた結果、有意差は認められなかったもののSEAns群でタイムが向上する傾向にあり、SEAns摂取による運動パフォーマンス向上の可能性が示唆された。

運動により生体内で生じた活性酸素種はタンパク質や脂質、DNA、白血球などを損傷させ、ミトコンドリアでのATP産生をもたらし身体的な作業効率の低下、すなわち疲労をもたらすことがわかっている。しかし、SEAnsに含まれるアンセリンを摂取することで、アンセリンの有する抗酸化作用により酸化ストレスの上昇を防ぎ、細胞機能の低下を抑制すると考えられている。

筋肉疲労の抑制効果

血液分析において、運動後のSEAns群の白血球数(WBC)がプラセボ群と比較して有意に低値を示した。WBCの増加は筋疲労との相関がある可能性も報告されている。そのため、SEAnsは、運動後の筋肉疲労を低減させる効果があることが示唆された。

運動により血液中のWBCは増加し、それによって筋繊維は損傷するとされているが、SEAnsに含まれるイミダゾールペプチドの摂取はスクワット運動による筋肉痛および筋疲労の低減や筋機能の速やかな回復に貢献し、運動継続時間の現象を抑制する可能性が示唆されている。

筋繊維損傷の抑制効果

プラセボ群では運動後にクレアチンホスホキナーゼ(CPK)が増加しているのに対し、SEAns群では運動後でもほとんど変化がみられなかった。CPKは運動に伴う筋繊維の損傷によって生じ筋肉痛を引き起こすとされている。そのため、SEAnsの摂取は筋繊維の損傷を抑制し、筋肉痛の発生を予防する効果があることが示唆された。

また、プラセボ群と比較しSEAns群では運動実施日の運動前においてもCPK値が有意に低かったことから、1週間の継続的なSEAnsの摂取が通常トレーニングによる筋繊維の損傷を抑制していたことが示唆された。

筋肉タンパク質の分解抑制効果

血糖値の変化をみると、プラセボ群では運動前後でほとんど変化が認められないのに対し、SEAns群では運動後に低下を認めた。運動による骨格筋収縮に伴う筋繊維損傷はタンパク質の分解を引き起こすが、SEAns群では効率的に血糖の利用が促進されることでタンパク質の分解が抑制されることが示唆された。

視力の低下抑制効果

SEAnsの摂取が運動誘発性の視力(静止視力:SVAおよび動体視力:KVA)に及ぼす効果を検討した。その結果、KVAが運動前に比べて運動後に改善傾向にあった。また、KVA/SVA(%)も有意差を認めないもののSEAns群で約16%向上した。

SEAns摂取が網膜等に何らかの作用をもたらしKVAが向上したものと考えられるが、その作用機序の詳細は現時点では不明である。

自覚的疲労感の低減効果

SEAnsの摂取が自覚的疲労感に及ぼす影響を検討した結果、ぼやけ感:目がしょぼつく・目が疲れる・目が痛い・目が乾く・ものがぼやけるといった症状をもつ群では、運動後にSEAns群がプラセボ群より有意に低値を示したことから、眼球や視力に関する疲労感についても改善されたことが示唆された。

さらに、だるさ感:腕がだるい・腰が痛い・手や指が痛い・足がだるい・肩が凝るといった疲労感を有する群の疲労感も、運動後にSEAns群がプラセボ群より有意に低値を示した。これは、SEAnsの摂取によりアンセリンが脳内物質に影響を及ぼし疲労感を低減させた可能性とともに、筋肉損傷の抑制が疲労感低減につながった可能性が考えられた。

まとめ

本論文は、スポーツ選手がアンセリン含有サケエキスを1週間継続して摂取した場合に、運動パフォーマンス(身体的疲労強度)、自覚的疲労感、視力などに及ぼす効果を検証した論文です。

研究結果より、アンセリン含有サケエキスを摂取することにより、①運動パフォーマンスの向上、②筋肉疲労の抑制、③筋繊維損傷の抑制、④筋肉タンパク質の分解抑制、⑤視力の低下抑制、⑥自覚的疲労感の低減、などの効果およびその傾向が認められました。

本論文は二重盲検試験を用いるなど、研究デザインもしっかりと計画されたものであり、その信頼性も高いと言えます。

本論文によって得られた知見は、スポーツ選手のパフォーマンス向上や怪我の予防を考える上で非常に有用なものであると考えます。